『コクリコ坂』では描写が繊細のため、よく見ておかないと「なんでこんな行動をとってるんだ?このキャラは?」みたいなことがよく起こります。
メルと俊が理事長とあいさつしに行ったときにも疑問を持った人が多いのではないでしょうか?
一人の女学生になぜこんなにも理事長たる人物が気にかけてたくさん話しかけているのか、気になりませんでしたか?
おそらく、理事長がメルによく話しかけていたわけは、メルの苦労を感じ取ったためだと考えられます。
また、船乗りであったメルの父親が、揚陸艦とも言われているLSTに乗っていたことは、理事長の心を大きく動かすきっかけともなったはずなので、その辺のところを深掘りしていきたいと思います。
コクリコ坂からの理事長とは
徳丸理事長は、港南学園高校の理事長を務めていて、徳丸財団の実業家でもあります。
カルチェラタンを存続させるか、取り壊すかという決定権をはじめ、全ての取り決めは理事長が担っていました。
実業家でもあるため、多忙な毎日ですが、決して殺伐としている人柄ではありません。
カルチェラタンを存続させることに決定したところから見ても、生徒の思いにきちんと耳を傾けていることが分かりますね!
また、理事長は知識が豊富な人でもあります。
カルチェラタンへ出向いた際に、哲学部の男の子とのやりとりにおいて、即座に「ディオゲネス」という哲学者の名前を発していました。
そう誰もが知っている名前ではないと思いますが、理事長は知ってたのです。
肩書きだけの理事長・実業家ではなく、知識もあり人望が厚い人物であるからこそ、皆の上に立つ者として相応しいのだと思います。
なぜ理事長はメルにたくさん話しかけた?
メルが苦学生・女学生だから?
理事長がメルに積極的に話しかけていた理由は、メルが苦学生であり一生懸命に生きていることを感じ取ったからではないでしょうか。
物語の舞台である1960年代は、男尊女卑の思想に反対の声をあげ始めた年代でもあります。
女性であっても働くことができるという声のもと、多くの女性が社会進出をしました。
とはいえ、まだ始まったばかりの進出であり、先駆けとなったメルはじめ物語中で働く女性たちは、困難がとても多かったと思います。
社会進出に限らず、女性が自分の思想をはっきりと言うことまでも、あまり尊重されていなかった時代でもありますよね。
メルの境遇に対する思いから?
その中でも、堂々と男の子2人と直談判に来たメルに対して、理事長は少し珍しく思ったのかもしれません。
なぜカルチェラタンを存続させたいのか?と理事長が聞いた質問に対し、「大好きだから」と答えたメルの発言は、全く裏のない素直な意見でした。
自分の思いを率直に伝えた姿勢からみても、メルの強さを感じ取ったと思います。
また、父親がかつて船乗りで、すでに亡くなってしまった経緯を聞いたことで、一家の大黒柱を失ったにも関わらず、一生懸命に生きているメルの姿にただならぬ気迫を感じたといったところではないでしょうかね。
理事長とメルの関係性は?
理事長はメルにたくさん話しかけるので、血筋の関係があるでは?と思うのも不思議ではありません。
でも、おそらく理事長とメルには血縁関係はないでしょう。
もし、血縁関係があるのでしたら、理事長はメルと会った瞬間に何かしらの反応を見せるはずですが、あたかも初めましてのような雰囲気でしたから。
理事長という人種的に活発な人間がいると興味を持つといった特徴が多い感じがするので、まさにそのような人物像を表現したのではないでしょうか。
理事長の言うLSTの意味とは
イオー・ジマ級強襲揚陸艦 (米)
排水量10700t/全長180m/速力23kt
米海軍初の本格的なヘリコプター揚陸艦。同型艦は7隻。1番艦のイオー・ジマは故障したアポロ13号を無事に回収した事で有名。因みに2番艦の艦名はオキナワ。pic.twitter.com/EmDi403wdr— 世界の軍艦bot (@gunkanbot) March 4, 2021
LSTとは揚陸艦のこと
Landing Ship Tank 略してLSTは、揚陸艦(ようりくかん)という意味です。
揚陸艦とは、人員と物資を陸にあげる役割を担っている船のこと。
表向きは運搬の役割をしていたLSTでしたが、予告なく朝鮮戦争へ繰り出されたという驚くべき事実があります。
さらに驚くことに、朝鮮戦争によって巻き込まれた船員たちは、英雄としては認められませんでした。
事実上、日本は朝鮮戦争に加担していないというスタンスであったため、「船員たちは自ら勝手に戦争へ出向いて死んだ」というようにみなされてしまったのです。
メルの父親は、朝鮮戦争の際にLSTの船乗りとして仕事をしていました。
しかし、船に乗っている最中に、LSTごと爆発する事故によって亡くなってしまいます。
LSTは実在していた
実際にも、LSTの爆発事故はあったようです。
朝鮮戦争真っ只中である1950年に、水中に仕込まれていた機械水雷に、触雷したLSTが爆発するという悲惨な事故が何度も起こっていました。
船員達はまさか自分たちが戦争に加担しているとは思っていなかったため、一番の犠牲者ともいえます。
また、メルはじめ残された遺族は、「勝手に戦って死んだ者たちの家族」として扱われていたために、真実を知らない人たちからは冷たい視線を向けられたでしょう。
逆境の中でも、メルの母親は子供たちを立派に育て上げ、母親の背中を見ながら育ったメルは、今となっては一人前の立派な女性となりました。
恐らく理事長は、LSTの真実を知っていたのでしょう。
知った上で、メルの母親や、メルがどれだけ懸命に生き抜いてきたのかを悟ったのだと思います。
まとめ:コクリコ坂からの理事長について
- 理事長は知識が豊富なイケオジ様
- 理事長がメルにたくさん話しかけていたのは、メルの苦労や気迫を感じ取ったから
- LSTは揚陸艦のことで実在していたもの
実際の時代背景をもとに作られたコクリコ坂は、私たちが学ぶべき姿勢や考え方が詰まっています。
一度観ただけでは分からないことも、実際にあった歴史を紐解いていくことで、納得するシーンが多々ありますので、ぜひもう一度『コクリコ坂から』をご覧ください^^♪