僕はときどき、特に目的もなくクラウドファンディングのサイトを眺めます。
世の中には、自分が知らないところで面白いことを始めようとしている人がたくさんいます。新しい商品を作る人もいれば、古い建物や地域の文化を残そうとする人もいる。まだ成功するか分からなくても、「こんな未来を実現したい」と動き始めた人たちの話を読むのが好きなんです。
先日も何となくCAMPFIREを見ていたところ、ひとつの企画が目に留まりました。
タイトルは、「~椿ねこ姫と守る、加唐島の未来~椿と猫がつなぐ小さな島の大きな挑戦」。
最初に目を引かれたのは、椿の花を身につけた和風の猫のキャラクターでした。
「猫をテーマにしたグッズ企画かな」
最初はそのくらいの感覚だったのですが、内容を見てみると、それだけではありません。
その背景にあったのは、人口減少や産業の衰退に直面する小さな島の未来を、キャラクターとビジネスの力で守ろうとする挑戦でした。
現在は正式な支援募集前の「アイデア公開中」という段階です。猫や離島が好きな人だけでなく、地方創生や地域ビジネスに興味がある人にも知ってほしい内容だったので、今回はこのプロジェクトを紹介します。
椿と猫が暮らす「加唐島」

加唐島は、佐賀県唐津市に属する玄界灘の離島です。
佐賀県の公式観光サイトでは県内最北端の島として紹介され、呼子港から船で十数分ほど。離島と聞くと行くだけでも大変そうですが、比較的訪れやすい場所にあります。
島の大きな特徴は、名前にもある「椿」と「猫」です。
加唐島は古くから椿の島として知られ、現在も数多くの天然の椿が自生しています。島で採れた椿から搾る椿油は、料理や化粧品などにも使われているそうです。
港や集落では島猫たちの姿も見られ、猫を目当てに訪れる人もいます。
青い海、赤い椿、のんびりと過ごす猫。
この3つがそろった風景を想像するだけでも、時間の流れが少しゆっくりしているように感じますね。
さらに、加唐島には日本と朝鮮半島の交流を感じさせる歴史も残っています。百済の武寧王の生誕地と伝えられる場所があり、小さな島でありながら、自然、特産品、動物、歴史、文化が重なっています。
のどかな風景の裏にある現実

ただし、島に魅力があることと、その島が将来まで残っていくことは別の話です。
- 加唐島が少子高齢化
- 人口減少
- 産業の衰退
- 担い手不足
といった問題に直面していることが知られています。しかもかなり深刻そう、、、
唐津市の離島振興計画によると、2020年の国勢調査時点で加唐島の人口は117人、高齢化率は51.3%でした。現在の人口とは異なる可能性がありますが、小さな地域で産業や暮らしを維持していく難しさは想像できます。
観光客が増えれば、島を知ってもらうきっかけにはなります。
しかし、何度か人が遊びに来るだけで、人口減少や担い手不足が解決するわけではありません。島の外から継続的にお金が入る仕組みや、そこで仕事を作る仕組みが必要です。
猫たちが道端で眠っている光景を10年後、20年後にも残したいなら、「いい島だね」で終わらず、島の魅力を収入や仕事につなげなければなりません。
僕自身も地方で暮らしているので、この部分は他人事とは思えませんでした。
地方には、都会にはない自然や文化、人とのつながりがあります。それでも、魅力があるというだけでは暮らしは成り立たない。
地域の良さを誰かに届け、商品やサービスに変える仕組みが必要です。
このプロジェクトが面白いのは、そこにキャラクターIPという方法を持ち込んでいる点です。
島の魅力を背負う3人のキャラクター

プロジェクトの中心となるのが、「椿ねこ姫」です。
椿ねこ姫は、加唐島を象徴する椿の花と猫を組み合わせた和風のキャラクター。単に猫をかわいく描いただけではなく、島の自然や文化をひと目で感じられるデザインになっています。
一緒に島の物語を作るのが、「炎猫」と「法珠坊主」です。
炎猫は、体に椿を思わせる模様が入り、しめ縄のような装飾をまとった力強い猫。島の自然やエネルギー、守り神のような存在を表現しています。
法珠坊主は、島に残る歴史や伝承をモチーフにしたキャラクターです。
3人に共通しているのは、加唐島に実際にある椿、猫、歴史、文化を土台にしていることです。
キャラクターを島の「顔」にして、まだ加唐島を知らない人に興味を持ってもらう。
キャラクターを好きになった人に、島の背景も知ってもらう。
そして、遠くに住んでいても商品を通じて島を応援できるようにする。
「地方創生」と大きく掲げても、知らない地域の話は自分事にしにくいものです。
一方で、かわいい猫なら最初の一歩は軽くなります。まずキャラクターに興味を持ち、その背景を知ったあとで、「この島を応援したい」と思う人が出てくるかもしれません。
猫は島への入口。その先に、本当の地域の物語があるのです。
かわいいだけで終わらせない収益モデル

地域のキャラクターを作る企画は、これまでにもたくさんありました。
ただ、キャラクターを作っただけでは事業は続きません。活動を続けるには、継続的な売上が必要です。
紹介動画では、収益の柱として2つの商品が考えられていました。
ひとつは、ステッカーやTシャツなどの物理的なグッズ。
もうひとつは、スマートフォン用の壁紙や限定イラストなどのデジタルコンテンツです。
グッズには、手に取れる喜びがあります。旅行の記念にもなりますし、島へ行けない人が応援の意味を込めて購入することもできます。
一方で、製造費や送料がかかり、売れなければ在庫を抱えます。
そこで組み合わせるのがデジタル商品です。
壁紙や限定イラストは在庫を保管する必要がなく、発送の手間も少ない。小さなチームで始める事業として、物理商品だけに頼るよりリスクを抑えやすい方法です。
動画内の計画では、初年度の月間総利益として、
- グッズ約30万円
- デジタル商品約16万円
合計約46万円という予測が示されていました。
また、500円のステッカーを原価150円で制作した場合の粗利率を70%、Tシャツの粗利率を57%と想定。
家賃や広告費などの固定費を月23万~25万円ほどに抑え、月40万~50万円付近を損益分岐点として考えているとのことでした。
もちろん、これは現段階の計画上の数字です。
実際の売れ行きや広告費、発送費などによって結果は変わります。
それでも、「キャラクターを作って人気が出ることを祈る」のではなく、原価、利益率、固定費まで考えている点には現実味を感じました。
地域活性化には情熱が必要です。しかし、続けるには利益も必要です。
寄付を集めて一度イベントを開くだけではなく、商品を販売し、利益を生み、その利益を次の活動へ回す。
そこまで考えられているのが、このプロジェクトの特徴だと思います。
グッズ販売の先にある3段階の計画

このプロジェクトは、グッズ販売だけを最終目標にしているわけではありません。
紹介動画では、今後の展開が3段階に分けて説明されていました。
第1段階は、合同会社を設立し、クラウドファンディングに挑戦すること。
椿ねこ姫を中心としたブランドを立ち上げ、最初の商品を販売し、小さくても売上が生まれる状態を作ります。
第2段階では、商品の種類を増やしながら、キャラクターや加唐島を応援するファンを育てます。
一度購入してもらって終わりではなく、新しい商品や情報発信を通じて島との関係を続けてもらう段階です。
第3段階では、キャラクター事業で得た知名度や資金を、実際の観光や地域活性化につなげていきます。
キャラクターを知った人が加唐島を訪れれば、船、飲食、宿泊、買い物などで地域にお金が動きます。新しい商品や体験が生まれれば、将来的には雇用につながる可能性もあります。
CAMPFIREのページでは、椿資源の活用と保護猫支援を進め、限定グッズを通じて島の魅力と新しいつながりを全国へ広げる構想が示されています。
キャラクターが人気になり、商品が売れ、その利益が椿や猫、島の活動へ戻っていく。
この循環を作れれば、島の外に住む人も加唐島の未来に継続的に関われます。
一度きりの寄付ではなく、好きな商品を買うことが支援になる。応援する側にも参加しやすい仕組みです。
400万~500万円は何に使われるのか

紹介動画では、クラウドファンディングの初期目標額として、約400万~500万円という数字が示されていました。
想定されている用途は、
- 会社の設立
- ブランドの立ち上げ
- 最初の商品の企画・製造
- 広告や情報発信
- 事務所などの固定費
- 事業開始後の半年間を乗り切るための運転資金
です。金額だけを見ると、大きいと感じる人もいるかもしれません。
ただ、商品を作るにはデザイン費や製造費がかかり、販売するにはオンラインショップの整備や広告も必要です。
会社として始めるなら、登記や会計など、表から見えにくい費用も発生します。
重要なのは、集めた資金を使って一度だけ商品を作るのではなく、その後は売上によって事業を回せる状態を目指していることです。
クラウドファンディングの資金は、止まっているエンジンを最初に動かす燃料のようなもの。
最初の半年で商品を作り、販売ルートを整え、ファンを増やし、自走できる状態へ持っていくための初期資金です。
なお、現在はまだ企画段階なので、正式公開時には目標金額、資金用途、リターンなどが変更される可能性があります。
支援を検討する場合は、公開後の最終的な内容を確認する必要があります。
僕がこのプロジェクトを面白いと思った理由

僕がこの企画を面白いと思ったのは、地域の課題を暗い話だけで伝えていないことです。
人口が減っている。産業が衰退している。担い手がいない。
どれも深刻ですが、それだけを並べられると、島と関係のない人は「大変そうだな」で終わってしまうかもしれません。
このプロジェクトでは、その入口に椿ねこ姫たちがいます。
- 猫のキャラクターがかわいい。
- 椿を取り入れたデザインがきれい。
- 加唐島という場所が少し気になる。
最初の興味は、そのくらい軽くてもいいのだと思います。
そこから島の現状を知り、グッズを買ったり、情報を共有したり、実際に訪れたりする人が出てくれば、最初の「かわいい」が地域を支える力に変わります。
もうひとつ良いと思ったのは、寄付だけに頼らず、事業として続けようとしている点です。
もちろん、キャラクターを作れば必ず売れるわけではありません。
魅力的な商品を作り続け、情報を発信し、ファンとの関係を育てる必要があります。計画通りにいかない場面も出てくるでしょう。
それでも、地域にすでにある椿、猫、歴史、文化を組み合わせ、新しい収入源を作ろうとする発想には可能性を感じます。
加唐島だけでなく、人口減少に悩むほかの地域にとっても参考になる挑戦かもしれません。
まだ企画段階。だからこそ今から見守れる
このプロジェクトは、2026年8月3日時点では「アイデア公開中」です。
まだ正式な募集は始まっておらず、公開が確約されているわけでもありません。
現在は「気になる」の登録やコメントを通じて、企画への関心を届けられる段階です。
- 猫が好きな人。
- 離島の風景が好きな人。
- 地方創生やキャラクタービジネスに興味がある人。
少しでも気になった人は、まずプロジェクトページをのぞいてみてはいかがでしょうか。
支援するかどうかを決めるのは、正式な内容が公開されてからでも遅くありません。
最初は一匹の猫のキャラクターが気になっただけでした。
けれど、その背景を知ると、これは小さな島が自分たちの未来を諦めず、新しい方法で一歩を踏み出そうとしている話だったのです。
椿ねこ姫たちが、加唐島と全国の人をどのようにつないでいくのか。
これからの展開を、ひとりの猫好き、そして地方で暮らす人間として見守っていきたいと思います。
※本記事は、CAMPFIREで公開されている企画ページとプロジェクト紹介動画を参考に執筆しました。掲載している金額や事業計画は現時点の構想であり、正式公開時に変更される可能性があります。
